歯科矯正治療が健康保険の適用にならない理由
学校歯科健診において、歯列不正や咬合異常の診査項目があるにもかかわらず、歯科矯正治療は口蓋裂や顎変形症やある種の先天異常が原因出ない場合、健康保険は適用されず、自費治療(健康保険外)となります。
「学校歯科健診で指摘するのに、治療は自費なのはなぜ?」
と、患者さんからはよく質問されます。その理由を考えたいと思います。
1.財源の問題
健康保険は、個人から集められる保険料と政府からの支出金(元は税金)によって運営されてます。医療の高度化、高齢者の増加、医療従事者の給料などで値段があがってゆきますから、医療費総額はどんどん増加してゆきます。令和3年国民医療費総額は約45兆円となり,前年度43兆円より約2兆円増加しています。
この金額を医科、歯科。薬局で分け合うわけですが、歯科の取り分は約6.7%ですが、歯科矯正治療を保険に導入すると一般歯科治療(むし歯、歯周病、入れ歯)の財源を食わないといけませんので、まず歯科医師会が反対します。予算のぶんどり合いですから、総枠が決められていれば、歯科矯正の治療費が増えれば、一般歯科治療の治療費が減らされる理屈です。
2.歯科矯正専門医が嫌がる
保険治療は、縛りがキツイ制度でもあります。高点数ですと、厚労省の技官に
難癖を付けられ、返金を強いられたりします。権力を笠に着たイジメみたいな制度で、これを苦にして自殺する医師、歯科医師がいたりします。
また、保険点数は全国一律で、物価の高い東京でも、比較的安い沖縄でも同じ点数です。物価の高い地域なら少しぐらい上乗せがあっても良いのにね。
病院経営の赤字が昨今問題になっておりますが、建物や設備、診療機器などの購入維持には消費税がかかりますが、保険点数は非課税なので、その差額分だけ持ち出しになります。(保険点数改正の時に数%分、消費税が付与される計算のようですが、10%には足りません。
経営環境にあわせて、自由に値段を決められる自費治療はそれなりに合理的かもしれません。
3.歯科矯正治療は治らない可能性がある
これを言っちゃうといけないかもしれませんが、
1)担当医によって治り方が違う
治療に関する知識や技術、治療経験は担当医によって異なります。日本の法律では、歯科医師免許を持っていれば歯科矯正治療を標榜するのは自由ですが、大学の授業では、歯科矯正治療の基礎知識を教えるだけで、実際の治療法に関する授業はほとんどゼロです。ウチの教授が、「歯科矯正治療をやりたかったら、大学に残って研鑽しなさい。」と、言ってました。日本矯正歯科学会の認定になるための条件の一つが大学などの研修機関で5年以上の実績が求められております。マルチブラケット法の治療なら最低4年かかりますから、5年という研修期間は最低条件ぐらいですね。
治した患者さんにより教えられることも多いので、臨床経験も大切な要素になりますが、一般歯科治療をしながらでは患者数が診られませんので、やはり専門開業したほうが良いと思います。
一般歯科治療をしながら、歯科矯正治療ができる頭の良い歯科医もおりますが、ごくごく少数だと思います。(私には無理です。)
2)治療意欲のない患者さんは治りが悪かったり、直らない可能性があります。
これは糖尿病などもそうですが、食事指導を守らない、薬を飲まない、運動もしないが病気を悪化させるのはよく聞く話です。歯科で言ったら、歯みがきをしないでむし歯や歯周病が悪化するのも同じです。
専門医であれば、それなりに厳しく指導しますし、初診相談時にやる気のなさそうな患者さんははっきり治療をお断りしております。
歯科矯正治療が健康保険に導入されない理由
よく保護者の皆さんから聞かれる話です。
「学校歯科健診で不正咬合の診査項目があるのに、なぜ保険診療で治せないのか?」
いろいろな理由が考えられます。
1.保険財政的に無理だ。
健康保険の原資は保険料と税金から成り、これを厚生労働省が病気であると認めた疾患に関して、診療報酬が支払われることになってます。
ですから、厚生労働省が不正咬合は病気ではない、と言えば、健康保険には導入されません。しかしながら、歯科矯正治療の治療費は税法上、医療費控除となりますので、財務省は病気であると認めていることになります。
診療報酬(保険点数)は厚労省で決められるわけですが、財源を診療の頻度(回数)で割り算するという、かなり単純で大雑把な決め方でされております。
歯科であれば、昔は総医療費の10%ぐらいを閉めておりましたが、現在では6.7%ぐらいです。ただでさえ、カツカツの歯科医療費に歯科矯正を入れると一般歯科医の点数はかなり削らなければなりません。それがわかっているので、まず歯科医師会の幹部が反対するでしょうね。今でも、歯科矯正(口蓋裂や顎変形症の歯科矯正治療)の点数が高すぎると文句を言われております。
あと、新しく導入された治療については高めの点数を付けて、ある程度普及すると点数を大幅にカットしたりします。我々は「ハシゴ外し」と呼んでますが。
顎変形症や口蓋裂の歯科矯正治療は健康保険適用ですが。ある年、一気に7万円ぐらい減らされました。また、一連の治療行為をまとめて安い点数に付け替えるという手法もよく使われます。マルメと呼ばれます。
とにかくせこくせこく点数を減らすように厚労省はやってきます。
2.歯科矯正治療は難易度が高い。
簡単に言うと、治る確率が担当医により異なるのです。治療経験1年目とベテランでは全然違うし、専門教育を受けていない歯科医にはほとんど無理です。
3.保険治療の請求が面倒
多くの歯科矯正専門医が感じていることですが、保険診療にすると、厚労省の技官と付き合わなくてはいけなくなります。コレが面倒。あと、自分の技術や立地条件によって、自由に料金を決めたいのです。田舎でのんびりやるなら60万円でOKでも、東京のど真ん中なら200万円もらわないとやってけません。
4.患者さんのやる気、モチベーション
保険治療の糖尿病でもそうですが、患者さんの治療意欲がない場合、治療はうまくゆきません。歯科矯正治療も同じで治療意欲の薄い子どもさんを治すのは非常に困難です。歯磨きをしてこなければ、ブラケットの形にむし歯が出来ます。
おそらく、今後も歯か供せ治療が健康保険に導入されることはないでしょうね。
マイナ保険証確認作業に必要な電子証明書の更新方法(裏技)
歯科医師会の先輩から、「どうしても電子証明書が更新できない。やり方を教えて。」とご相談を受けたので、ウチの診療室の端末でやってみた。
マニュアルは、以下のurlに書かれている。
iryohokenjyoho.service-now.com
が、しかし、このやり方ではできなかった。Edgeから直接更新ページに到達できない! 誰だ、このマニュアル書いたヤツ。
30ページもあるマニュアルを読む気にもならないし。
さて、更新のやり方だが、2つの場合があるようだ。
1.端末の画面からEdgeが立ち上がる場合。(アドレスバーにURLを直接入力できる場合)→以下の手順2からでOK。
2.端末の画面からEdgeが立ち上がらない場合。(アドレスバーにURLが直接入力できない場合)→以下の手順1から始めてください。
☆手順は以下。
1)まず、起動画面左下の「証明書の取得画面」のアイコンをダブルクリックします。(写真1)

2)次に出てきた画面(写真2)のアドレスバーにある「ne.jp/」のスラッシュ以下の文字を消し、「/p/ru/」に変えて、リターンキーを押します。写真3のように入力するわけだ。
https://cert.obn.managedpki.ne.jp/p/ru/
のアドレスを今一度、確認し、リターンキーを押す。

3)すると「認証用の証明書の選択」画面に変わるので(写真3)、有効期限を確認して、マウスで選択し、右下の「OK」をクリックします。

4)目的の写真4の電子証明書の更新画面が現れますので、更新するファイルの日付を確認し、指示に従って、更新作業を行ってください。

以上です。
学校歯科健診(その3)
当院にいらした初診相談の患者さんには、現症(現在の状態)をまず指摘させていただきますが、上顎前突症(俗に言う「出っ歯」)とお伝えすると、「初めて言われた!」と、お答えになる方が多くいます。学校歯科健診で指摘されていないということなんでしょう。これは学校歯科健診で健診結果を児童生徒にちゃんと伝えていないか、不正咬合の健診基準を実施していないか、のどちらかでしょう。学校歯科健診のマニュアル(実施要綱)では、健診後の事後報告をすることを定めております。学校歯科医の仕事として、条文に定められていることなんです。
「初めて出っ歯と言われた。」という方には、「正常咬合では、上の前歯と下の前歯がキッチリ当たってかみ切れる状態を言うのであって、学校歯科健診でその前後的な差が6ミリを超えると健診基準「2」と判定し、専門医に相談に行ったほうが良い。」となるのです。ただし、矯正歯科治療は保険が効かないので、実際に治療するかどうかは患者さんとその親御さんの判断によります。
ちなみに厚労省の歯科白書では上顎前歯と下顎前歯の水平的な距離が5ミリで出っ歯と判定されています。歯科医としては、上下の前歯がかみ合っていなければすべて不正咬合なんですけどね。
先にも書きましたが、歯科矯正治療を受けるかどうかは、患者さん親御さんのご判断次第です。ただ、治療法は一人一人で違いますので、個別に受診して、専門医の話を聞き、正しい知識を得てから判断されれば良いと思います。鼻から治療を受けないではなく、知識を得て、料金など総合的に判断されればよろしいでしょう。
軽い不正咬合なら、簡単な治療で治るものも多くあります。また、成長期に治療をすれば成人になったときに治療が容易になったりする症例もあります。
成長期に治療しても無駄な症例もありますから、その場合は永久歯列になってからまとめて治療するのが良い場合もあります。
繰り返します。症例はひとりひとり違います。正確な情報を得てから判断されたらよろしいでしょう。
日本歯科医師会とその政治団体
今は亡き橋本龍太郎氏がシラを切ったいわゆる「日歯ヤミ献金」問題。検索すると以下の文章が出てきます。
***引用ここから***
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***引用ここまで***そこでも触れられていますが、峻別とは、「人も区別する、場所も組織も区別する」ですよね***引用、ここから***
○佐々木(憲)委員 次に、日歯と日歯連の一体化問題について坂口大)=2014年臣にお聞きしたいと思うんです。
大臣は、医師会と政治団体の関係について、明確に峻別すべきだという答弁をされています。
二〇〇一年六月十一日の当時の医政局長も、日医、日歯、看護協会など、特に大臣からの強い御指示もございまして、公益法人の活動と政治連盟の活動を峻別するように、特に最近強く指導している、こういうふうに答弁をされているわけです。
坂口大臣、昨年六月十三日には、こういうふうに言っているんですね。例えば医師会と政治連盟が同じ場所で同じ電話番号で、そして同じ人が会長というのは好ましくない、そこは明確に区別をしていただく、こういうふうに答えておられます。
ところが、この予算委員会の総括質疑で私が紹介しましたように、まずは本体の日歯と日歯連、この会長が同じなんですよ、依然として。それから、会計責任者も全く同じなんです。何も峻別されていない。都道府県を見ましても、四十五の都道府県で住所も同じ、三十三の都府県で会長が同じなんです。
これはもう、事実からいいまして、峻別すると言っておられますけれども、実態は峻別されていないんじゃありませんか。
○坂口国務大臣 きょう、さきの委員にもお答えを申し上げたとおりでございまして、これは平成十三年でございましたか、医師会の問題が起こりまして、そのときに各都道府県に対しまして文書を出した。また、医師会や歯科医師会、薬剤師会等に対しましても、その旨を、こういうふうにすべきだということを指導したということでございます。
内容は主に三点でございまして、それは、公益法人が政治団体の会費を特別会費の名目で同法人の会費と一緒に徴収しない、それから、公益法人の事務所が政党の入党申込書の送付先となっていることは避けるべきだ、それから、公益法人の会費と政治団体の会費が同一の預金口座で管理されていることは避けなければいけない、主にこういう内容のものを出したということでございます。
その後、各都道府県に対しましても、そういうことが行われないように各都道府県からもよく指導をしてほしい、各地方の場合には、ということで言っておりまして、各都道府県の中からも、そういうふうに指導して現在こうなったというふうな症例も寄せられております。
しかし、全体としてまだどうなっているかということまでは私も把握をいたしておりませんので、そこはもう一度またしっかりと、そういうふうになっていないということであれば徹底したいというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 二〇〇一年の八月には、おっしゃったように、都道府県に文書を出しているわけですね。それで調査をした。ところが、私、その調査結果を見せていただいたんですけれども、回答があったのは十三府県なんですよ、四十七都道府県に通達を出したにもかかわらずですよ。それから、歯科医師会の記述があったのが九府県、そのうち指導、改善したのはたった四県なんです。これ、厚生労働省がやった仕事であります。だから、実際にはほとんど直っていないということなんです。
これは、福岡市の日歯連の昨年五月一日の機関紙「福市歯連盟」というのがあるんです。それを見ますと、「各支部については峻別は問われない状況でございます。」「支部から班に行きますと連盟と本会が」、本会というのは歯科医師会ですけれども、「一緒になって全然問題ないということになっています。」と。これは昨年五月の段階でもそういう形ではっきりと活字にされている。
ことし一月の、愛知の「愛歯月報」によりますと、県の歯科医師会と日歯連の区別は、「規則上そうしたわけで、入退会が自由になったわけではない」と答えているわけです。これは峻別がまともに行われていない証拠でありまして、だから直らないんですよ。
ですから、やはり大臣がおっしゃったんですから、人も区別する、場所も組織も区別する、はっきりそういう指導をするということをおっしゃっていただかないと全然直らないんじゃないですか。
○坂口国務大臣 先ほど申しました三点につきましては、これは徹底をしなければいけないので、そういうふうにしたいというふうに思っております。各都道府県の中には既にされているところもあるわけでありますから……(佐々木(憲)委員「一つか二つですよ」と呼ぶ)全体から来なかったからそれは全部だめだというわけではないというふうに思っておりますが、今後も徹底をしたいというふうに思います。
***引用ここまで***
選挙の度に、動員をかけたりするので、今でも守らていませんね。
口腔機能発達不全症について
お口の機能というか、働きは?と聞かれたら、どうお答えしましょう。
第一は、ご飯を食べることです。人間に限らず動物は口から食物を取り入れて、消化器官で栄養を取りだして、生きてゆきます。ご飯を食べるということは、まず食物を認知して、口に運び、そして口の中に取りこみ、歯を使って咀嚼し、ゴックン(嚥下)する一連の動作を意味します。
認知症になると食物への認知、食欲、時間関係が不確かになりますので、この場合は医科への受診が必要になりますね。
口の機能には、ご飯を食べること以外にも、発音(おしゃべり)、呼吸、運搬(口にくわえて運ぶ)、攻撃(噛みつく)などがありますが、今回は咀嚼だけに焦点をあてて書いてゆきます。
咀嚼に関しては歯科医師の領域です。噛むためには自分の歯、あるいは入れ歯がしっかり上下の歯が噛み合っていることが必要になります。不正咬合でも前歯部開咬や下顎前突や上顎前突では噛みあわせが悪い状態になりますので、丸呑みしがちになります。咬むこと(咀嚼)が苦手(と言うか、能率が悪い状態の噛み合わせ)で食物を細かくできなければ丸呑みするしかありませんものね。
また、嚥下(ゴックン)には乳児型と成人型の2種類があり、その二つは離乳期に移行するものなのですが、それが上手に行っていない人もかなりの数おりまして、嚥下機能の発達不全とされております。
丸呑みする子どものの特徴は食事中にあまり噛まずに水分で流し込むことです。あまり咀嚼しないので、舌の動きが少なく歯列の成長が悪いため顎が小さく叢生の状態になりやすいのです。ただでさえ、日本食は柔らかい物が多いので、(お母さんが優し過ぎる?)あまり噛まなくても飲み込めたりします。
徳川歴代将軍の顎の骨をしらべた東大の研究がありますが、初代将軍の家康はエラの張った狸顔ですが、時代が進むにつれて細面のエラの張らないすらっとした顔に変化してゆきます。これはお毒味を何回か経て冷たくなった物でも美味しく食べられるように柔らかい食事が与え続けられた結果と考察されております。軟かくてあまり噛まずに済む食事を続けると噛まない(=咬筋をつかわない)ため、下顎骨が細長く発達しない小さなものに変化してゆくのが実証されているわけです。
で、口腔機能発達不全の治療法ですが、筋機能訓練(舌のトレーニング)はそのひとつになります。が、全国の歯科医院でこれをちゃんとできる歯科医、歯科衛生士がどれだけいるでしょう?
機能と形態は密接な関係がありますが、形があまりにおかしくなった場合、形から直さないと機能は回復しません。噛めない歯並びで噛め、と言われてもそれは無理です。歯並びがおかしかったら、歯科矯正治療が必要になるわけですが、この治療は保険外(自費治療)ですので、治療に踏み切るには敷居が高すぎます。
骨格性の不正咬合であれば、健康保険が適用になりますが、そのほとんどが外科手術を前提にしたものです。つまり、かなりひどい不正咬合で顔面の変形を伴うものでない限り、健康保険適用にはなりません。(例外としては口蓋裂に起因した不正咬合があります。)
ちなみに歯科矯正専門医が舌のトレーニングの保険適用しようにも、変な縛り(施設基準)があるために参入できません。ま、うちらは、不正咬合込みで根本的総合的に治しますので、どうしても自費治療になってしまうわけですが。申し訳ないが、そういうことになります。
健康保険の病名に「口腔機能発達不全症」が2018年から導入されておりますが、舌の筋力だけ調べて鍛えて管理しても治りません。非常に軽度の前歯部開咬なら治る可能性がありますが、2㎜でも上下前歯が離れていたら歯科矯正治療込みで治療しないと改善しないでしょう。小生、40年以上歯科矯正治療に関わっておりますが、筋機能訓練(MFT:Myo Fanctional Therapy)だけで治った患者さんは二人だけです。12歳以上ではゼロです。習癖になって時間が長い人ほど改善は難しいです。
筋機能療法に関しては、ジックフード先生の講習会も受けていますし、高い本も何冊か購入して読み、患者さんに接して工夫を重ねて40年やってます。
文献で調べると、口腔機能発達不全症は若年者で3割。不正咬合も3割。この若い人達が成人しても発達不全は残りますから、日本人の約3割は口腔機能に異常があると思われます。
人間の身体の成長(=体が大きくなること)と機能の発達(=働きが複雑進歩してゆくこと)は成長期に起こります。運動機能のよう20歳過ぎても改善できるものもありますが。。。
機能は20歳を過ぎて壮年期(40歳ぐらい)までは緩やかに落ちて行き、高齢者に向かうにつれて身体(体力、筋力)も機能(動き)も落ちてゆきます。中学生の時に100m12秒で走れても、50歳で12秒で走れますか?
機能が成長期に100%に行っていなければ、壮年期~高齢期にその機能の落ち込みはひどくなり、口腔機能不全症になりやすくなります。(口腔機能だけじゃありませんが。)これ、簡単に言えば「老化」ですが、この単語を嫌う人は「フレイル」と呼び変えてますね。
成長期に口腔機能を100%までにしておくことは、高齢者における機能不全(老化)を予防することになる訳です。嚥下(ゴックン)の機能が低下すれば、まずムセが始まり、誤嚥性肺炎になりやすくなります。高齢者における死因の30%は肺炎ですが、誤嚥性肺炎は多いようです。
歯周病治療と歯科矯正治療の関係
歯周病(歯槽膿漏)の治療の第一選択は、口腔清掃です、口の中の食べカス(食物残渣)を栄養にして歯周病菌が増殖し、歯肉や歯槽骨といった歯を支える組織(歯周組織)を破壊する病気なのです。プラークコントロールなんて横文字をカタカナにするより、お口のお掃除お手入れですね。
歯周病菌が増殖した後から殺菌剤を使う方法もありますが、他の有用な常在菌も殺してしまうと、カンジダなどの真菌が増えて、以前よりも悪い状態を引き起こす危険性があります。(真菌を殺す薬は毒性が強い。)
故に歯磨きが重要になるわけです。
しかし、歯ブラシだけの口腔清掃では、どんなにキッチリやっても60点ぐらいのお掃除しかできません。歯と歯の間は歯ブラシが届きませんから。そこでデンタルフロス(糸ようじ)や歯間ブラシの使用が必須となります。
しかし、通常の歯ブラシでの歯磨きでも面倒な人にさらにフロスや歯間ブラシを使えって言うのは無理ですよね。
ちなみに、歯ブラシを使う歯磨きにもいろいろな方法(テクニック)が存在します。一番簡単なのはスクラビング法(Scrubing法)=磨きたいところに歯ブラシを当て軽く押して20~30往復小さく振動するように横磨きする方法、ですが、キッチリやると20分位かかります。当然歯磨き粉(歯磨剤)は使いません。どうしても歯磨き粉が使いたい人は上記の歯磨き粉無しのスクラビング法をやった後で、少量の歯磨き粉を歯ブラシに付けて、口の中で泡立ててください。フッ素入りの歯磨き粉なら少量の水で2回口をすすぐだけにしてください。
車だって、家だってキレイに使った方が長持ちします。家にゴミやほこりがたまれば、臭いが発生するし、柱や畳がクサくなるし、ゴキブリやダニが大量発生します。それで暮らしてゆけますか? 無理でしょ?
家の掃除をするようにお口も掃除しましょうよ。
そのためには掃除が簡単できるように家をリフォームすることも必要になるわけでして。。。
さて、長々と歯磨きのやり方、その理由をを書いてきましたが、歯並びの悪さも歯磨きの難易度を上げる要因になります。3本歯が重なっていたら、その真中には歯ブラシが絶対に届きません。物理的に無理ですよね。総いた場合、死角がなくなるように歯科矯正治療を行うという手もあるわけです。歯周病の発生を予防する手段として、歯科矯正治療は有用であるのです。


(症例の説明)矢印①は右側の上下側切歯が交叉咬合であり、その結果下顎右側側切歯が咬合性外傷で歯冠が伸びた状態(矢印②)になってます。
歯並びが整うと、歯ブラシも歯間ブラシも使いやすくなります。これは、見た通りです。歯肉退縮については年齢の要素もあります。この患者さんは57歳です。若いうち(20歳前)に歯列を整えて置けば、歯肉の高さはもう少し良い状態で保存できたでしょう。
大学の授業では歯周病治療の方法の中で歯科矯正治療が推奨されています。しかし、現在の保険治療では歯科矯正治療は保険外ですので、実際に歯科矯正治療を適用する歯科医は少ない状態です。
(おまけ)
むかーし、アメリカ(USA)に行った時に、風呂上がりの耳掃除がしたくなって、コンビニに買いに出かけました。綿棒を表す英単語を知りませんでしたから、絵を描きながら、「細い棒の両端に綿(コットン)が付いたものが欲しい。」とお店のでっぷりしたオバさまに言いましたら、「チッチッチッ。コットンじゃねえよ、カトゥンだ。」と言いながら、ジョンソンアンドジョンソンの箱を持ってきて、「カトゥン・スワブ」と上手な英語で差し出してくれました。Swabが「掻き取る」というのは知ってましたから、綿で掻き取るのが綿棒なんだな、とガテンしたもんです。
ちなみに、う蝕活動歯研にスワッブテストというのがありまして、歯垢を掻き取って培養液に入れてう蝕活動性を調べる方法があります。